ユーザーは"シズル"を買う〜次のアクションを呼び起こすには? − こうすれば売れる!レスポンス・ライティング(3)
[2002月09年19日]
(木村 祥一郎 / 週刊e-Report編集部)
●次のアクションを呼び起こすには?
疑問を投げかけておいてすぐには答えない、あるいは、結論だけを先に言って、そこでは根拠を示さない。そうした、その場で内容が完結しないテキストによって、ユーザーの「何だろう?」「なぜだろう?」という気持ちを喚起すれば、次のアクションに誘い込むことができる。前回は、こうした経験則を「ツァイガルニック効果(ゼイガルニック効果)」で説明してみた。
もちろん、これはニュースの見出しのような短いテキストに限ったことではない。
答えまでの道のりが遠ければ、むしろ強化されるという理論なのだ。つまり、文章や講演など、ある程度量的にまとまったものの方が効果を得やすいのだ。
こうした「次のアクション」を呼び起こすセオリーは他にも知られている。今回はそのうち利用しやすいものをひとつ紹介しよう。(とはいえ、まったく利用されていなかったり、うまく利用されていないことが多いのだが)
●シズルを売れ!
「ホイラーの法則」という書籍ご存知だろうか。「ステーキを売るな、シズルを売れ!」と唱えたE・ホイラーが1937年に発表したセールス手法をまとめたマーケティングの古典である。ホイラーは知らなくても、この「シズルを売れ!」というのは、マーケティングに関ったことのあるなら知っている人も多いだろう。セールス時に重要なさまざまなクロージング・テクニックを、5つの公式といくつかの原則、ルールにまとめている。
たしかに、60年以上も前の書籍ということもあり、ここで唱えられているテクニックは既に形骸化し、盲目的に信じ込んで使うと、逆にユーザーに不快感を与えるものもいくつかある。しかしながら、レスポンス・ライティングにあたっては、今もなお十分通用する公式がある。「xyz公式」とされているものだ。
ホイラーは、いわゆるコピーを書くときの要点としてこの公式を挙げているわけではない。しかし、ここで使われている考え方は十分に応用が効くのだ。(もちろん、この公式だけですべて事足りるわけではないが)
「xyz公式」とは、お客に製品やサービスを売り込む際に、お客自身が持つ基本的な購買動機をまとめたものである。
x − 自己保存の基本的購買動機
y − ロマンスの基本的購買動機
z − 金銭の基本的購買動機
つまり、人間の基本的な購買動機はこのx、y、zのいずれかの側面を持っており、そのため製品やサービスの特徴を大々的にアピールするのではなく、まずこれらの基本的購買動機を満たすものだ、とアピールする。そうすれば、お客の目は自然と製品やサービスに向くというものである。ヘッドラインのコピーなどに、x、y、zのいずれかの要素を入れるか、あるいは、いずれかを組み合わせて利用することによって、あなたの製品やサービスへの関心度が増すというわけだ。
●ユーザーにとっての「利点」であり「利益」をアピールせよ
zがもっともわかりやすいので、ここから説明しよう。もっとも単純なものは「儲かる」ということ。直接的にいくらいくら儲かるというような表現もあれば、間接的に利益を得ることができるという表現もあるだろう。
とはいえ、この購買動機は詐欺に使われることも多いため、ほとんどのユーザーは「楽して儲かる」「1日○○円稼げる」というような直接的な表現には怪しさを感じるだろう。しかし、それでもやはり金銭による購買動機というのは、注目を惹く力が強いことは確かである。zを利用する際には、いかにして怪しさを払拭できるかというところに鍵があるということだ。(その方法にはいくつかあるが、また別の機会に譲る)
ここ最近では「転職」や「求人」の広告などで、このzをうまく利用したコピーが目立つ。「年収○○○万円」というような表現がまさにそれだ。
続いてxについて。これは、ともすると「マズローの欲求段階説」の「生存欲求」や「安全欲求」を意味しているものと捉えてしまうかもしれないが、ホイラーが考えているのは、もう少し広い意味での「自己保存」という考え方である。
たとえば、ホイラーは「5日間で効き目がなければ全額返金いたします」というメッセージを挙げている。つまり、「自己保存」とは、「自分」が広い意味で「損をしない」「守られる」という意味で使っているのだ。
「Office XP」のプロモーションの際、フリーズしても文章が保存されている、ということをアピールした広告があったのを覚えているだろうか? これも「自分を守る」という意味ではxと言えるだろう。
最後にyについて。ホイラーは、ロマンスに関する欲求は、セックスの欲求だけでなく、冒険や旅行といった欲求も含まれると述べている。マズローで言うと「生存欲求」「安全欲求」が満たされた後にくる欲求段階全般を意味していると思われる。
たとえば「家」の広告などでは、いかにその住まいが「快適」であるか、その家の周辺環境が豊かであるか、ということをアピールするものが多い。最近では、欠陥住宅の問題(x、yに関わる問題)や、地震対策(xに関わる問題)をアピールするものも多い。これらはyの基本購買動機に訴えていると言えるだろう。
●ユーザーは“シズル”を買う
「シズル」とはすなわち、このx、y、zの要素、つまりユーザーに訴えるべき「利点」であり「利益」のアピールと言えるだろう。さて、あなたの提供している製品やサービスにはこのx、y、zの要素が含まれているだろうか? 単なる「機能」や「特徴」ではなく、ユーザーにとっての「利点」であり「利益」であるx、y、zをきちんとアピールできているだろうか? 次回は、この点から話を進めてみたい。

