ネットが磨く言葉の「看板」キーワード広告の可能性を探る
「e-Reportインターネット・マーケティングセミナーin京都」から
[2003月09年19日]
(構成・京都経済新聞社編集部)
出席者
オーバーチュア株式会社社長 鈴木 茂人氏
有限会社山田精油社長 山田 康一氏
株式会社大原の里 味噌庵 山本 和博氏
イー三六五株式会社 田中 淳一郎氏
ドラゴンフィールド株式会社 曽利 昌広氏
コーディネーター
京都経済新聞社編集長 築地 達郎
◆総合前文
京都経済新聞社とドラゴンフィールドはこのほど京都リサーチパークで、「e-Reportインターネット・マーケティングセミナーin京都」を開いた。
ネット広告の新潮流として注目が高まっている「キーワード広告」(検索型広告)をテーマにサービス提供企業やユーザー企業の関係者が討論。検索エンジンの機能を積極的に活用するマーケティング活動の可能性を探った。会場には一般企業や広告業界関係者など約100人が参加し、討論に真剣に聞き入った。
◆基調講演
〜“こだわりビジネス”に効果高い〜
オーバーチュア株式会社
鈴木茂人氏
オーバーチュアの米国法人は1997年に米カリフォルニア州パサデナで創業したキーワード広告(ブランド名は「スポンサードサーチ」)のベンチャー企業だ。創業者自身が成功するわけがないと思っていたほど、突飛なアイデアのビジネスだった。
しかし、市場からは強く歓迎され、99年にはNASDAQに上場、わずか6年で9万5000社のクライアントを持つ売上高800億円規模の企業に育った。キーワード広告の市場の半分を当社が獲得している。
◇キーワード広告主流に
米国ではインターネット広告に占めるキーワード広告のシェアが高い。
2002年は24%(14億ドル)、2003年は35%(22億ドル)に達しており、2004年には49%(32億ドル)とほぼ半分を占めるようになるという見方もある。
「キーワード検索に対応しないインターネット広告はなくなるだろう」と見るアナリストもいるほどだ。
ブロードバンド先進国の韓国でも米国同様の早い伸びを示している。2002年の2100万ドルが2003年には6000万ドルへと3倍増になると予想されている。
日本では半年あまり前に事業をスタートさせた。すでにクライアントは1000社に達している。キーワード広告はバナー広告に比べて低い初期コストで広告出稿できるので、今までインターネット広告には縁がないと思っていた企業が積極的に対応してくれているといえる。
例えば、東京湾岸や隅田川で屋形船の運航をしている会社の例が特徴的だ。
同社の場合、オンラインでの予約を増やしたいというニーズがあって当社のサービスを使い始めたが、「屋形船」だけでなく、「忘年会」「新年会」「夜景」「花見」といった言葉をキーワードとして設定し、そうしたキーワードを使ってネット検索をするユーザーを誘導することに成功した。
導入開始後アクセス数が200%アップしているという。
〜見込み客を強く誘導〜
第1に、特定の案件に関心を持つ利用者への訴求効果が高い、という点だ。
ユーザーがなんらかの理由があって検索したキーワードを手がかりに広告を提示するわけだから、広告の内容にも関心を持ってくれる可能性が高い。
キーワード広告を「読む」頻度は、バナー広告に比べて14倍に達するという調査もある。
従って、2つ目の強みとして採算性を計算しやすいというメリットが出てくる。コストをかけたくない場合は相場の高くないキーワードを選んで設定すればよい。
キーワードの単価はネット入札で決める。1クリック当たり最低35円からスタートするが、人気の高いキーワード、例えば「自動車保険」などは1クリック当たり500円以上になっている。
一方で、人気の高いキーワードを含んでいても、絞り込んだ複合キーワードにすると2ケタぐらい安くなる場合がある。
キーワードの選び方は自由なので、月間1000万円以上かけている大手クライアントから同1500円程度のクライアントまで、さまざまな規模の企業がそれぞれの戦略に応じて利用できる。
〜規模に応じた利用を〜
このような特徴を持つキーワード広告を利用するマーケティングが、ネット上で今後主流になっていくとみられる。質の高い見込み客を集める能力とブランディング効果を組み合わせて、効果分析をしながらマーケティングを行っていけるからだ。
とくに、こだわり商品を取り扱う小さな企業にとって大きな効果が期待できると思う。そうした企業が多い京都でもぜひ積極的に活用して欲しい。
◆事例報告1
〜効果的なキーワードの見つけ方
ドラゴンフィールド株式会社
曽利 昌広氏
今回は、こだわり商品を取り扱う京都の2社を紹介したい。
「へんこ山田のごま油」で知られる有限会社山田精油(京都市西京区桂)と、民宿で使ってきた自家製味噌の外販に取り組む株式会社大原の里「味噌庵」(左京区大原)だ。
両社の代表には、今日のパネルディスカッションにも参加してもらっている。
◇山田製油
山田精油の場合、97年に自社Webサイトを立ち上げたものの、会社概要的な内容にとどまっていた。99年にはオンライン注文が可能になり、検索エンジン最大手のYahoo!にも掲載されたが、2002年まではほとんど手をかけておらず、売り上げ増強にはつながっていなかった。
今年初め、サイトのリニューアルを行うとともに、検索エンジン対策を強化。その一環としてキーワード広告を導入した。現在、約150個のキーワードを選定し、広告効果を測定しているところだ。例えば、「ごま油」「胡麻油」「中華調味料」「ドレッシング」などを掲げている。
7月の成果を見ると、「中元」というキーワードによる集客210件と最も多く、次いで「ごま油」の83件、「蜂蜜」の73件などとなっている。同社はゴマの花から採れたハチミツを商品として取り扱っているため、ハチミツに興味があるユーザーが関心を持って訪れているようだ。
またおなじゴマでも、「ごま油」「胡麻油」「ゴマ油」という表記方法によって集客力が異なる。前述のように「ごま油」が83件に対して、「胡麻油」11件、「ゴマ油」7件となった。
◇味噌庵
一方、「味噌庵」は、旅館「大原の里」の二代目が本格的な独立採算事業として手作り味噌のネット通販に取り組んでいる。この6月に本格参入したばかりだ。
同社の場合は、キーワードの数を10個程度に絞り込み、効果を追求している。「みそ」「味噌」「自然食品」「京都大原」「贈答」などだ。7月の成果では、「味噌」が267件と最もクリック数が多く、次いで「大原」の110件、「自然食品」の96件などとなっている。
同社の場合、ポイントになるのは、修飾語を伴うキーワードの活用法だ。例えば「味噌」に「手作り」という修飾語を加えた「手作り味噌」はクリック数25件にとどまったが、Webコンテンツの中身を工夫し、「手作りなのであまり多くの量を作れませんが、妥協をしないで質の高いお味噌を提供していきたい」というメッセージを書き込むことで、成約に結びつく要素を増すことができた。
効果的なキーワードを見つけるためには、キーワードを考えるだけでなく、それに合わせたWebサイトの作り込みが必要だ。また、検索エンジンの側がどのような表記を重視しているかといった情報を得て、対策を取る必要もある。そうした一連の作業を連携させることによって、キーワードを通じて「お客様」を常に考える姿勢を持つことが大切だといえる。
◆事例報告
〜検索エンジン対策を究める〜
イー三六五株式会社
田中淳一郎氏
キーワード広告を実践的に活用するためには、その土台となる検索エンジンの構造や戦略をしっかりと理解しておく必要がある。
ここでは最大手のYahoo!を例に、その傾向と対策を解説したい。
Yahoo!の検索エンジンは「ディレクトリ」型と呼ばれるもので、URL(ホームページのアドレス)をカテゴリーに分け、整理して掲載している。最大の特徴は、同社のスタッフが掲載の可否を判断し、スタッフによる紹介文とともに掲載する仕組みになっている点だ。
なんといっても圧倒的なシェアを誇るうえに、掲載情報への信頼性が高いため、いったん掲載されると継続的なアクセスを誘導することが可能になる。
しかし、「1社1URL」の原則から商品・サービス別のURLを掲載できないとか、紹介文が自由に付けられない、掲載確率が低い、掲載不可であっても理由が分からない――といった問題がある。
このため同社は先に企業向けの有料審査サービスとして「ビジネスエクスプレス」をスタートさせた。7営業日以内に審査し、掲載不可の場合も理由を通知するというものだ。しかし、いずれにせよ掲載基準はクリアしなければならない。
Yahoo!の掲載基準は「オリジナルコンテンツが十分にあるか」「サイトの目的や伝えたい事柄が明確で、デザインや内容が分かり易いか」「設置されたリンクがすべてきちんとつながるか、画像がすべて表示されるか」「デザインや構成に工夫を凝らし、どんなユーザーでも容易に閲覧できるか」――というもので、コンテンツの拡充やサイトのクリエイティビティの向上を行う必要がある。
これは長期的視野に立った活動にならざるを得ないことに留意すべきだ。
また、機動的あるいは主体的に掲載させることができないことから、特定商品の販促キャンペーンや期間限定のコンテンツなどに即座に対応することが難しいという難点も出てくる。
こうしたことから、Yahoo!のプラットフォームを活用しつつ短期的にサイトへの誘導が可能になるキーワード広告への注目が高まっているわけだ。
こう考えてくると、キーワード広告には、Yahoo!を使う従来の検索エンジンマーケティング(SEM)に比べて、「コントロール性」「リアルタイム性」「ターゲッティングの容易さ」という3つの優位性が浮き彫りになってくる。
いずれにせよ、長期的観点からコンテンツの拡充や質の向上を図りつつ、短期的効果を期待するタイムリーなプロモーションを仕掛けていくことが肝要だ。常に両者のバランスを取っていくことが大切である。
◆パネルディスカッション
〜意外なキーワードに集客力〜
・パネリスト
オーバーチュア株式会社 鈴木 茂人氏
有限会社山田精油社長 山田 康一氏
株式会社大原の里 味噌庵 山本 和博氏
イー三六五株式会社 田中 淳一郎氏
ドラゴンフィールド株式会社 曽利 昌広氏
――集客力のあるキーワードってどんなものですか?
山田「『こだわり』とか『手作り』とか、私たちの側がアピールしたいキーワードでは案外アクセスがないんですね。むしろ『蜂蜜』とか『ドレッシング』といったキーワードがきっかけになってお客さんがサイトにアクセスしていただける場合が多い。でもまだ何が“売れるキーワード”かという点については模索中ですね」。
山本「集客という意味では、地名が重要だと感じますね。当社の場合は宿に来ていただくという目的もありますからなおさらです」
鈴木「本格的に活用していくには、キーワードごとのアクセス状況を正確に把握することですね。その一方で、限定販売とか季節販売といった企画を立てて、キーワードとの組み合わせを模索していく必要がある。」
ホームページ改革がポイント
――キーワード広告を利用する上で留意すべき点は何だと思われますか?
曽利:
「単にキーワードを探すだけではなく、キーワードをきっかけに訪ねてきてくれた顧客を、最後の申し込みページまでスムーズに誘導することができるようなホームページの構造をつくることがより大切だと思います。キーワードを明確に意識することで、ホームページの作り方も変わってくるのではないでしょうか」。
田中:
「Webサーバーにアクセスカウンターをつけるのは当たり前になったが、今はどんなサイトからどんなキーワードを使ってアクセスしてきたかが分かる『ログ解析ツール』が充実してきています。これをうまく使って、自分のサイトにふさわしいキーワードを見つけだすのが効率的でしょうね」。
――Googleをはじめとするロボット型(自動収集型)検索エンジンの場合は、集客力のあるキーワードをホームページに埋め込んでおくだけで対応できますね。
田中:
「そのとおりですね。ですが、Yahoo!のような人力で登録するタイプの検索エンジンの場合は、こちらが意図するキーワードに基づいて表示されるとは限らない。ですから、キーワードによる広告が必要なんですね」。
――キーワードの相場というのはどうですか?
鈴木:
「1クリック当たり35円からスタートするんですが、1500円近いものも出ている。ポピュラーなキーワードは支払い能力のある大手企業がなんとかして押さえようとするので、価格が上がります。ですから、予算のない企業さんの場合は、複合キーワードなどを考えて、大企業が興味を示さないけれども訴求力のある言葉を探せばいいんです」。
山本:
「当社の場合は、直接販売の効果もあるんですが、大手百貨店などからの問い合わせという形で効果が出てますね。ですから、販路開拓コストという形で十分にメリットがあります」。
――便宜上「キーワード『広告』」と呼ばれてますが、実際はキーワードを利用したセールスプロモーション(SP)やマーケティングと同義であることがよく分かりました。これからは、広告とマーケティングの間の垣根がどんどん低くなって行くんですね。
鈴木:
「そうですね。今まではネットでビジネスをしているというだけで価値があった訳ですが、これからは、お客様と共有できる言葉をどれだけ磨けるかが成否を分けることになるでしょうね」。

