ギザギザのフォントはもうイヤ~BJkitとsIFR ~ アイデアマンズアイデア(6)
[2006月07年13日]
(宮永 邦彦 / アイデアマンズ)
10年でフォント技術はどう変わった?
企業のインターネット利用が本格化して早くも10年が経とうとしています。その間、目覚しい技術の進歩がありました。ブロードバンド化に伴う表現力の向上や、検索技術の進化は広告のあり方も大きく変えました。
ところが10年経っても目立った進歩が見られない部分もあります。それが今回取り上げるWeb上でのフォントの問題です。
効率よくWebの表現力を高めるフォント周辺技術にも注目している弊社では、Flashを使って美しい日本語を表示する技術「Beautiful Japanese Kit」(以下BJkit)を開発、公開しました。
・BeautifulJapanese
http://www.ideamans.com/tool/beautifuljapanese.php
Webサイトの構築やリニューアルで発生するのが、テキストの画像化という作業です。最近はSEO重視やWebの標準化の流れの中で、テキストの見直しが進んでいますが、それでもメニューや見出しといった部分がテキストのままではどうしても格好がつかないし、クライアント環境ごとの違いをコントロールすることができません。
そこで優秀なWebデザイナーや多忙なWebディレクターが、テキストの画像化という、半ば機械的な作業を延々と繰り返しています。
標準技術で美しいテキストを表示するsIFRとBJkit
一方で海外ではFlashの進歩に合わせて、sIFRという技術が生まれました。BJkitのベースになった、「Flashを使ってWebで美しい欧文テキストを表示する技術」です。
・Mike Davidson -- sIFR 2.0: Rich Accessible Typography for the Masses
http://www.mikeindustries.com/sifr/
米国ではABC NewsやNIKEなどのサイトでも導入されているので驚きです。
・ABC News (個別記事の見出しがsIFR)
http://abcnews.go.com/
・Nike Considered. The Context.
http://www.nike.com/nikebiz/nikeconsidered/context.jhtml
導入例をまとめたフォーラムがこちらです。
・Excamples in sIFR Documentation & FAQ
http://wiki.novemberborn.net/sifr/Examples
sIFRはH1見出しなどHTML上の任意のテキストを、同じ内容を表示するFlashムービーに置き換えます。Flashムービーにはアウトライン化されたフォントが埋め込まれており、Flashならではのアンチエイリアスがかかった美しい文字が表示されるという寸法です。
テキストをFlashへ置き換える処理はJavaScriptが行うので、元々はしっかりとテキスト記述されたHTMLが存在します。したがってFlash非対応のブラウザでも閲覧可能で、SEOにも適しています。
日本でも多くのFlashデザイナーがこの技術に注目しましたが、日本語環境にその技術を適用するには困難がありました。欧文フォントはせいぜい百数十文字なのに対し、日本語フォントには約二万種類の文字が存在します。
sIFRではSWFファイルにすべてのフォント情報を埋め込む必要があり、結果、日本語フォントの場合は数メガ規模の巨大なファイルになってしまうのです。一方、BJkitではキャッシュを利用することにより、「最初の読み込みには時間がかかるが、2回目以降はスムーズに表示されます」。
どうして革新的なフォント配信技術が生まれないか
BJkitはテキストの画像化という作業に辟易している方に好評を博していますが、導入には大きなハードルがあります。フォント提供者の権利関係の問題です。
おそらくWebで最も流通している、いわゆる「モリサワフォント」をこのBJkitで利用できないか、株式会社モリサワのフォント流通課に聞いてみました。メールで問い合わせたところ、非常に早い対応で下記のように回答をいただきました。
(以下、メールのやり取りを抜粋)
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質問:
1.御社のフォントをBJkitで利用することは可能でしょうか?
2.不可能な場合、その理由はなんでしょうか?
3.可能な場合、その条件はなんでしょうか?
4.その際に必要なパッケージおよび使用許諾契約はどれにあたりますか?
回答:
さて、下記メールの件、1台のパソコンでの作業またはネットワーク上のサーバでの自動処理に拘わらず、アプリケーションソフトウェアによる弊社フォントのフォントデータのアプリケーションファイルへの埋め込みにつきましては、次の条件を満たすものに限り、許可しております。
・埋め込み時にファイルで使用されていた文字のフォントデータのみを埋め込むこと。
・埋め込まれたフォントデータがファイルから取り出され、単独でフォントデータとして使用出来ないこと。
・埋め込まれたフォントデータを使用して表示される文字が変更出来ないこと。
・新たに入力された文字が、埋め込まれたフォントデータにより表示されないこと。
従いまして、埋め込まれたフォントデータを使用して編集が可能なFlashデータへ弊社フォントデータを埋め込み、そのFlashデータを販売または頒布することは、弊社フォント製品のフォントデータから文字情報を取り出し、フォントの代替として機能するデータを、例え限られたデータ内であっても、第三者に使用させることになりますので、現状の弊社フォント製品及びフォントライセンスの使用許諾の範囲外の行為となります。
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(抜粋終わり)
確かにモリサワフォントの使用許諾契約には下記の禁止事項が明記されています。
・モリサワフォントの商業利用に関して
> http://www.morisawa.co.jp/font/info/commercial_use.html
3.禁止事項
(2)本製品から取り出した文字情報、フォントの代替として機能するあらゆるデータ、これらに改変等の翻案をして製作したフォント等の二次的成果物、もしくはこれらのデータを第三者に交付、送信その他の方法により頒布(有償・無償を問いません)すること」
BJkitやsIFRはその利便性から、この禁止規定に抵触してしまうのです。
フォントはつい水や空気のように使いまわして当たり前のように考えてしまいます。しかし特に日本語フォントとなれば、膨大な数の文字種が存在し、その開発に大変な労力が費やされていることは想像に難しくありません。
そしてアプリケーションソフトのように動作上の制約を設けにくいことから、制作現場の一部ではライセンスの不正利用が横行しているのも事実です。フォントが正しく利用されればフォントはもっと安くなるでしょうし、使用許諾契約の制約も緩和されていくことでしょう。
しかし優れたフォントが利用者の実感として「高い」のもまた事実。モリサワからは年間固定額でフォントを利用し放題になる「モリサワパスポート」も用意されています。
・モリサワ パスポート
http://www.morisawa-passport.jp/
Webで美しい日本語を表示したい
このような権利関係の問題があり、BJkitは現在のところ使うに使えない実用性の低い技術に留まっています。たとえばもしフォントを提供しているデザイナーや事業者が直接SWFファイルを配布してくれれば、Flashの技術を持たないデザイナーでも美しく表示されたフォントを利用することができます。つまり追加ソフトウェアが不要な
Web用フォント配信フォーマットとなりえるわけです。
アイデアマンズ株式会社ではそういった賛同者も広く募集しています。また、こうれすればBJkitを有効活用できる!というご提案もお待ちしていますので、開発者であるアイデアマンズ株式会社門田( monta@ideamans.com )まで声をお寄せ下さい。
以上、BJkitにまつわる日本語フォントのお話でした。
アイデアマンズ株式会社では実はもうひとつ、FireWorksのスクリプトを活用してテキストの画像化をフルオートで実現する技術を使っています。スクリプトといってもプログラマーは必要ありません。新しいデザインパターンもすぐに反映できます。次回フォントについてお話するときは、その技術をご紹介します。
おまけ~日本語フォント関係のリンク集
今回の記事を執筆するにあたり、参考にしたリンク集を公開します。
http://del.icio.us/monta/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%83%88
http://del.icio.us/miyanaga/%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%83%88
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■アイデアマンズ株式会社 宮永 邦彦
アイデアマンズ株式会社は新規事業専門会社です。
幸せな労働環境の実現のため、「場所に依存しない開発体制」を日々研究して
います。オープンソースプロジェクトを参考にSubversion、trac、Eclipseなど
の活用に挑戦中。今月下旬はメンバーの故郷である北海道で合宿を実施。その
成果を試そうと思っています。
http://www.ideamans.com/
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