イマドキのキャンペーンを考える ~ 思い出しキャンペーン - プロモーションズ佐藤のキャンペーン企画の鬼(4)
[2004月08年26日]
(取材協力:佐藤 文彦/株式会社プロモーションズ http://cs.promotions.co.jp/ )
( 取 材 :村松 成樹/週刊e-Report編集部)
6・7月は「成功する懸賞キャンペーン ~ 失敗しないための懸賞キャンペーン10ヶ条」と題して、さぶみっと!JAPANの林さんとともに2回にわたってキャンペーン企画の基本セオリーについて考えてみました。今回からはさらに一歩踏み込んで、実際に行われているキャンペーンを題材に、キャンペーンの企画・運営について、より実践的な立場から考えてみることにしましょう。取材協力はご存知“キャンペーン企画の鬼”、プロモーションズのデジタルマーケティングコンサルタント、佐藤さんです。
●8月はキャンペーンが多い? 少ない?
━(村松)では、さっそくですが、8月のキャンペーン事情ってどうなんでしょう?
(佐藤)うーん、一般の消費者のみなさんの目にはどう映っているかわかりませんが、実は8月はキャンペーンが少ない時期なんです。「夏のキャンペーン」っていうと、たいてい6~7月で終わることが多いんですよね。1年を通じて考えると、秋のキャンペーンは9~10月、冬のキャンペーンは12~1月、春のキャンペーンは3~4月っていう感じです。8月のほかにキャンペーンが少ない時期は、2月になりますね。
▽キャンペーン・シーズン
6~ 7月 夏のキャンペーン
9~10月 秋のキャンペーン
12~ 1月 冬のキャンペーン
3~ 4月 春のキャンペーン
━ それは意外な気がしますね。8月はまさに真夏ですから、何となく清涼飲料とかいろいろやってるんじゃないかと思ってました。最近は食玩とかボトルキャップとかオマケの注目度がすごいですしね。それに、何よりこの時期がいちばん売れる時期ですよね?
たしかに清涼飲料が年間で最もよく売れるのは7~8月です。理由は単純に暑いから(笑)。季節的なものですからこれには逆らえません。だからこそ、この時期に向けて、前もって売れる下地を作っておかないと出遅れてしまいます。
そういうわけで、ちょっと前の6月あたりから夏のキャンペーンを実施して販促をかけておくわけですよ。そうやって、とくに清涼飲料だったら、最近はコンビニの売り場を確保しておく必要があるわけです。
━ なるほど。シーズンに入ってから手を打っているようでは遅いということですね。事前にキャンペーンを打って、たとえばコンビニに対して「売れる商品」という実績を作っておく、と。もちろん消費者の認知も上がりますから、シーズンになってから出遅れることはないというわけですね。
●少ないながらも気になる、8月のキャンペーンは?
━ では、気になるキャンペーン、話題のキャンペーンというのは?
うーん、気になるということで言えば、販促を意識していて、ネットを活用したものになりますね。今実施中で目立ったものとしては次の3件くらいでしょうか。いずれも販促手法としてすっかり定番になったネット連動型のクローズド・キャンペーンということになりますね。
▽江崎グリコ セブンティーンアイス
「セブンティーンアイス×オニツカタイガー限定シューズプレゼント」
http://go-st.jp/web/index.html ※8月31日(火)24:00まで
▽大塚製薬 アミノバリュー
「Let's Run! to ホノルル キャンペーン」Bコース ※Aコースはオープン
http://bcaa.jp/index2.html ※9月30日(木)24:00まで
▽サントリー 烏龍茶
「i-Podプレゼントキャンペーン」
http://neas.oolongcp.jp/oolong/pc/index.html
※10月20日(木)24:00まで
●8月に烏龍茶、なぜ?
━ それぞれ今実施している理由はありそうですね。「セブンティーンアイス」はターゲット層の小中高生の夏休みが終わるまで。「アミノバリュー」はホノルルマラソンに参加することを考えたらこれくらいの余裕は欲しいですよね。単純な推測ですが(笑)。でも、烏龍茶はどういう狙いなんでしょう? 麦茶だったら夏ですが、烏龍茶にはとくに季節感もないですし。
そうですね。お茶のキャンペーンというのは春か秋ということが多いですから、7月から始めるのは珍しいですよね。しかも、力の入れ方もハンパじゃありませんよ。i-Podが4,000名に当たるということは、1台3万円としても4,000名で1億2,000万円ですよ。プレゼント代(の一部)だけでこの金額ですからね。
システムは、同じサントリーの「BOSS」(缶コーヒー)とか他の商品で使っているものをカスタマイズすれば済むのかもしれませんが、カンフー娘の対戦ゲームはやはり数千万円くらいはかかってるんじゃないでしょうか。
━ その代わり応募条件もけっこうたいへんじゃないですか?
応募に必要なポイントは16ポイント。ペットボトル1本につきシール1枚で1ポイントですから、16本分必要です。仮に週4日お昼に1本飲んだとして、集めるのにだいたい1ヶ月かかります。キャンペーン期間は3ヶ月ありますから、その気になれば無理しなくても3回は応募できるというわけです。
━ まぁ、ふつうは週4で烏龍茶じゃ飽きちゃうかもしれませんね(笑)。でも、佐藤さんは気になったキャンペーンはいつも実際に試してみるんですよね?今回のはどうでした?
いやー、私もやっと集まりましたよ(笑)。でも、考え方としては何も間違ってないと思うんです。烏龍茶っていうのは別に刺激的でもなく、ごく当たり前の飲み物なわけです。つまり、日常的に飲めるもの(飲んでもらいたいもの)だからこそ、こういう発想もあり得るわけです。1本150円として16本で2,400円。ということは、5万本多く売れたらとりあえずi-Pod分にはなるわけですから。
●「思い出しキャンペーン」ってなに?
━ サントリーの烏龍茶っていうのは、お金を払ってお茶を買うというスタイルを根付かせた草分け的存在。すっかり定着して、定番商品として根強く生き残っていますよね。
それでもね、今はお茶ブームですから、お茶と言っても各メーカーからいろんな商品が出ていますよね。そうしたら「最近飲んでないな」とか、あるいは、もちろん知ってはいるけど「買ったことはない」っていう消費者も多くなってくるわけですよ。手をこまねいていたら先細りするかもしれません。そこで、定番商品の認知度向上と売り上げの底上げをねらってこうしたキャンペーンを打つわけです。
しかも、今なら競合のお茶のキャンペーンはやってないし、8月はキャンペーン自体も少ないときています。そこに話題のi-Podをドーンと持ってくるわけですから注目を集めないわけがないでしょう。カンフー娘のゲームというワクワク感の演出にも抜かりがありませんしね。
━ 清涼飲料ばっかり飲んでちょっと飽きてきたかなっていうとき、i-Podのシールが目に入ると思わず手が伸びるかもしれませんね。秋のお茶シーズンに先行して商品をアピールできますし。
そうそう。誰もが知ってるし、一度は飲んだこともあるような定番商品にあらためて目を向けてもらう、買うきっかけをつくる、そして、商品の魅力を確認してもらう - こういうのを私は勝手に「思い出しキャンペーン」って呼んでいるんですよ(笑)。
●8月にはもう冬のキャンペーンで頭がいっぱい
ところで、この時期はキャンペーンが少ないということで、キャンペーン業界がいつもより暇かというとそうではありません。たとえば佐藤さんの場合、ネットと連動させたリアルイベントを手掛けるなど、効果的な手法の開発に余念がありません。それに8月にはもう冬のキャンペーンの準備が始まっているそうで、それで頭がいっぱいだとか。
さて、企業の担当者のみなさん、今年の冬は「思い出しキャンペーン」で定番商品の底上げを図ってみては?
■今月の“鬼”の眼ギラリ☆ ~ 8月の気になるモノ・コト
【 ビッグイシュー 】
渋谷駅南口の雑踏の中、突然張りのある声が耳に。
「ケヴィン・コスナーの独占インタビュー! ビッグイシュー!」
振り返ると、見たこともない雑誌を手に持って路上販売する男性。もちろん、表紙はケヴィン・コスナー。でも、どことなく・・・ホームレス? 思わず歩くスピードを緩めてまじまじと見てしまいました。
「それはね、『ビッグイシュー』っていうんだよ。知らない?」と佐藤さん。早速ネットで検索してみると・・・
・ビッグイシュー日本
http://www.bigissuejapan.com/
サイトによれば、『ビッグイシュー(THE BIG ISSUE)』は英国で成功して世界(24の国と50の都市・地域)にも拡大中のサブカルチャー雑誌。見たところ内容も十分メジャー感があり、同人誌やミニコミというレベルのものではなさそう。
それどころか、「ストリート発の若者向けオピニオン誌」という硬派な雰囲気も。ただし、他の雑誌と決定的に違う点が1つ。それは売り手が“ホームレス限定”であること。
とはいえ、「使命はホームレスの人たちの救済(チャリティ)ではなく、彼らの仕事をつくること」だとか。「ホームレスの仕事をつくり自立を支援する」というわけです。運営する「ビッグイシュー日本」も慈善団体ではなく、なんと、「有限会社」。最近注目される「社会的起業家」というわけですね。
バックナンバーには日本人アーティストとして矢井田瞳も登場。なんと「ホームレスサッカー ワールドカップ」なるものまで(しかも、開催国はスウェーデン)。現在すでに11号まで出ていて、9月からは月2回の発行になるとか。けっこう好調なようですね。いや、まったく知りませんでした。
佐藤さんによれば、売るのが上手い人は売り文句や口調、発声まで工夫していて思わず振り返ってしまうとか。やはり、売るのが上手い人・下手な人があるようですね。
それにしても、ホームレスといえばマーケティングからこぼれ落ちたような存在だったはず。それを再びマーケティングに取り込むことで社会復帰を促すとは。社会的弱者の支援もマーケティングで実現することができる - そんなマーケティングというものの懐の深さに、佐藤さんもあらためて魅力を感じている様子でした。

